最早それは血であり肉である。③ 〜似て非なるもの編〜

彼女が結婚して2年たった・・・
僕達は別れる事を前提に続いていた。
しかし、そこには二人とも触れようとしない。

一度、始まってしまった不倫は楽でいいのだ。
そこには束縛もなく、彼女は僕に対する負い目のような気持ちがあるから分、気遣いも完璧だ。
そんな彼女に僕はその時のありたっけの優しさを以って接する。

でも、いつの頃からだろう・・・
その話しの中に二人(彼女と旦那)の未来像に繋がっていく気配のようなものを感じだした。
彼女の幸せはきっとここにはない。そう感じてしまう。

彼女といると満たされる・・・しかし、それは彼女が満たされていればこそ・・・
ふと、思う・・・
僕が彼女の幸せの道標を隠しているのではないのか?
そして僕自身の未来も閉ざしているのではないのか?

僕は彼女の為、彼女の旦那の為、そして何より僕自身の為に1つの嘘を実行した。

11月・・・僕は一方的に別れを切り出す。好きな人ができた、と・・・
彼女は納得しなかった。が連絡を取れなくした。
12月・・・クリスマスに僕たちは最後のデートをする。
彼女は僕の嘘を理解した上で別れることに頷いてくれた。

今でも会いたいと思う。しかし少し胸の支えが取れた気がする。
彼女を大切に思う気持ちは今でもある。
いや、むしろ以前よりも大きくなっている。
しかし、それは恋や愛とは似て非なるものだ。
ただ、単純に幸せになって欲しいのだ。

なんだ、まだ整理しきれてはいないから上手く言えないが、僕達は別れた事によりある意味、より深く繋がりあえた様気がする。
彼女を想うこの気持ちは恐らく消える事はないだろう。
そして、僕はまた笑顔をもって向き合う事ができるだろう。

あぁ、彼女を想って過ごした8年の時間と今抱いているこの気持ちこそが僕という人間にとって、血であり肉なのだ。
だからこそ、進んでいけるような気がするのだ。