スプートニクの恋人・・・

と『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。そんなタイトルの小説を購入。村上春樹著の『スプートニクの恋人』は以前、友人より借り一度読んだもののすっかり内容を忘れてしまったので購入した。
スプートニクの恋人 (講談社文庫)
とはいえ唐突に購入決意をしたのではなくそこには伏線がしっかりとあるのである。
先日、アメリカのSSS『アトランティス』が打ち上げに成功し、国際宇宙ステーション太陽光発電パネルが取り付けられるとの事。
宇宙開発が始まり来年で50年というこの時にふとスプートクニ2号に乗せられた『ライカ』を想ってしまう。
ロシアとアメリカが挙って争い始めた宇宙開発。それはセルゲイ・コロリョフ(露) とフォン・ブラウン(米)との戦いでもあった。
この時、アメリカに先んじてロシアが打ち上げた人口衛星こそがスプートニクである。
そして、それは同時に現在から未来至る人類の宇宙開発史元年にもなるのである。
ロシアはその後、スプートニク2号に『ライカ』と呼ばれる犬を搭乗させることになるのだが、これが失敗。『ライカ』は帰らぬことになった。
人類の進歩は犠牲なしには成しえない・・・悲しい限りである。
そんな哀愁を抱いた先にいきついたのが『スプートニクの恋人』。
この本の中でヒロインの想い人を『スプートニク』・ヒロインを『恋人』と見立て、その物語を『ライカ』に掛けている。なかなか凝った仕掛けではある。
そして『スプートニクの恋人』に限らず、(村上春樹作品を通じて往々して見受けられるのだが)とにかくいろいろなものが『消失』、または『損なわれていく』物語で最後に辛うじて救いが訪れる。
恐らくは物語の大部分は自己との対話に帰結している。それがたまたま今作品については『スプートニク』をモチーフにしているのでしょう。
損なっていく自分・・・宇宙に一人佇んだ『ライカ』・・・広い宇宙の中の人間・・・
きっとそういうどうしようもない切なさに光りを求めたのではないのか・・・

コンタクトという映画でジョディ・フォスター演じるアロウェイ博士がこう呟いた。
『It's a waste of space(宇宙に人間だけだなんてもったいないと思わない)』
コンタクト 特別版 [DVD]